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数字でみる日本の木製家具製造業 #1


#1 製造品出荷額等の推移(1)

 現在,日本の地場産業は厳しい状況にあるとよく言われる。私自身,木製家具産地,とりわけ日本を代表する木製家具の産地の一つである旭川木製家具産地には定期的に足を運んでおり,そこでも同様の話を聞くことが多いが,この種の言説は実際のところどうなのだろうか。事実を反映しているのか否かという点も含め,日本の木製家具製造業の推移を数字(統計データ)から確認してみたい。なお,ここでは各数値の推移を追うことのみに限定し,増減の要因については言及しない。

 

 はじめに,日本の木製家具製造業の製造品出荷額等(脚注1)の推移を確認する。図1は,1970年から2019年までの50年間における製造品出荷額等の推移を示している。なお,当該データは従業者4人以上の事業者の数値を合計したものであり,全事業者が対象ではないことに注意されたい(脚注2)

図1 製造品出荷額等の推移

[出所]『工業統計調査(産業別統計表)』 各年版。

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 図から,1970年代は増加傾向にあり,80年代前半は一時停滞するも,後半は再び増加傾向に転じている。その後,1991年をピークに2000年代は減少傾向に転じ,2010年代は増減を繰り返しながらほぼ横ばい状態である。なお,ピーク時の1991年は2兆1,132億2,500万円であるのに対し,2019年は7,499億4,900万円であり,ピーク時の約35.5%にまで減少している。

 

 次に,増減の推移をより詳細に検討するために,前年比の推移を確認してみよう。図2は1971年から2019年までの製造品出荷額等の前年比を示したグラフである。

図2 製造品出荷額等の前年比の推移

[注]『工業統計調査(産業別統計表)』 各年版のデータに基づき,筆者が計算した。

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 とりわけピーク後である1992年以降の28年間の推移に着目する。まず,前年比でプラスになったのは,合計7年(2003年,2007年,2011年,2013年,2014年,2016年,2019年)のみであある。また,2000年代までの期間に限定すると,18年間のうちわずか2年のみである。

 

 それに対して,前年比がマイナスになっているのが21年あるが,とりわけ,5パーセントを超える大幅な減少を示したのは,合計12年(1992〜1994年,1998〜2002年,2008〜2009年,2013年,2015年)である。また,2000年代までの期間に限定すると,18年間のうち10年もある。

 

 なお,2010年代は増減を繰り返しており,2019年に近づくにつれてその幅は小さくなっていることが図からわかる。これらのことから,製造品出荷額等という点から考えた場合,日本の木製家具製造業は,とりわけピーク後の約20年間,非常に厳しい状況にあったことが窺える。実際に,1990年代,2000年代,2010年代それぞれにおける前年比の10年平均値(幾何平均値)は-4.3%,-5.3%,0.2%となり,そのような状況がデータとしても明らかである(脚注3)


[脚注]

  1. 製造品出荷額等は,1年間(1月〜12月)における製造品出荷額,加工賃収入額,くず廃物の出荷額及びその他の収入額の合計であり,消費税及び酒税,たばこ税,揮発油税及び地方揮発油税を含んだ額である。製造品の出荷とは,その事業所の所有に属する原材料によって製造されたもの(原材料を他企業の国内事業所に支給して製造させたものを含む)を,1年間のうちにその事業所から出荷した場合をいう。また,(1)同一企業に属する他の事業所へ引き渡したもの,(2)自家使用されたもの(その事業所において最終製品として使用されたもの),(3)委託販売に出したもの(販売済みでないものを含み,1年間のうちに返品されたものを除く)も製造品出荷に含む。加工賃収入額とは,1年間のうちに他企業の所有に属する主要原材料によって製造し,あるいは滝行の所有に属する製品又は半製品に加工,処理を加えた場合,これに対して受け取った又は受け取るべき加工賃をいう。その他の収入額とは,製造品の出荷,加工賃収入額及びくず廃物の出荷額以外(例えば,転売収入(仕入れて又は受け入れてそのまま販売したもの),修理料収入額,冷蔵保管料及び自家発電の余剰電力の販売収入額等)の収入額をいう(経済産業省 2021)。
  2. 従業者3人以下のデータについては年によって推計値しか得られないことから,ここでは従業者4人以上のデータを示す。なお,従業者規模別のデータについては後ほど検討する予定だが,木製家具製造業では,全事業所に占める従業者3人以下の事業所の割合が比較的高い。
  3. 1970年代と1980年代における前年比の10年平均値(幾何平均値)は,13.6%,3.0%である。

[参考文献・資料]


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